コーヒーの摂取量は毎日の睡眠時間に影響を及ぼさない!?最新研究結果を解説!

2021.02.12


一般的に「飲むと眠気が覚める」といわれているコーヒー。
眠気が覚めるのはコーヒーに含まれるカフェインの覚醒作用によるものとされていますが、
コーヒーと睡眠にまつわる意外な研究結果が発表されました。
「コーヒーの摂取量は毎日の睡眠時間に影響を及ぼさない」というのです。

これは一体、どういうことなのでしょう?
研究結果を発表した名古屋市立大学大学院の准教授、西山毅先生にお話を伺いました!

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「コーヒーの摂取量は毎日の睡眠時間に影響を及ぼさない」――。
この研究結果を発表したのは、公衆衛生学の研究をしている西山毅先生。

西山先生によれば、人の日常的な睡眠時間は、4割方、遺伝子によって決まっているといいます。
ただ、膨大にある人の遺伝子のうち、どの遺伝子が睡眠時間にかかわっているかは未解明でした。
そこで西山先生は、3万1230人の日本人を対象とした研究を開始。
遺伝子情報と日常的な睡眠時間を解析したところ、唯一、睡眠時間との関係が示唆されたのが
「ALDH2遺伝子」だったそう。

ALDH2遺伝子は、アルコール代謝に深くかかわっている遺伝子で、
この遺伝子がどのような型をしているかにより、お酒に強い・弱いが決まるとされています。

「実は最近、日本人研究者の研究により、このALDH2遺伝子の変異体『rs671』の型が、
コーヒーの摂取量にも関係していることが明らかになりました。
特に『rs671』関しては、日本人の睡眠時間に強く影響することもわかっています」(西山先生)。

そこで西山先生は研究の第2段階として、アルコールとコーヒーを対象に、
この2つの摂取量が毎日の睡眠時間にどのような影響を及ぼしているかを調査。
1万770人の日本人を対象に性別・年齢・日常の睡眠時間・アルコールおよびコーヒーの摂取量・
睡眠薬の服薬状況などをもとに、メンデルランダム化と呼ばれる解析を行ったところ、
アルコールの摂取量は睡眠時間に影響を及ぼすことが明らかになりました。
ところがコーヒーの摂取量に関しては、影響を及ぼさないことが判明したそうなのです。

ちなみにアルコールに関しては、ビールに換算すると350ml当たり睡眠時間が約4.2分延びることが確認されたそう。
ただし西山先生は、「アルコール摂取量によって睡眠時間が延びるのは、睡眠の質が低下しているから。
その代償として、睡眠時間が延びているのでしょう」と指摘します。

一方のコーヒーの摂取量は日常の睡眠時間に影響を及ぼさないことがわかったわけですが、
コーヒーに含まれるカフェインに覚醒作用がある以上、コーヒーを飲むと睡眠時間は短くなるような…。

その問いに対して西山先生は、「カフェイン代謝に関しても、
個人が持つ遺伝子によって決まることが明らかになりつつあります。
つまり、ほとんどの人は意識的・無意識的に、自分の体質に合った摂取量に調整しているのでしょう。
その結果、日常的な睡眠時間に影響を与えるほど、コーヒーを飲まない。
今回の研究結果は、そう、解釈できます」。

ただし、今回の研究とカフェインの覚醒作用は別問題。西山先生も「健康を考えれば、
『就寝前にはコーヒーの摂取を控える』という睡眠衛生の要項は守るべきです」と指摘するように、
飲み過ぎには注意してくださいね。

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いかがでしたか?

人体の複雑さと同時に神秘を感じますが、これらの遺伝子研究がさらに進むことで、
私たちが快眠を得るためのメカニズムも、さらに解明されていくことでしょう。




名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学准教授

西山 毅 先生

名古屋市立大学医学部卒業後、約10年にわたり、精神科で主に臨床に携わる。その後、国立保健医療科学院で統計学を学んだことを契機に、研究を主体に。「心理的形質に対する遺伝疫学研究」「心理測定学」をテーマに研究を続ける。
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